講演会「ツキノワグマの生態と被害防止対策について」
11月22日朝、前橋の住宅街にイノシシが出没。警察や消防約30人が出動し、4時間後に捕らえられたことが、翌日の新聞各紙に報じられていました。
今年は全国的にクマの出没が極めて多い状況ですが、前橋のイノシシ出没事件はこれからの野生動物と人間のせめぎ合いの行く末を暗示しているようで、何やらゾッとしました。
今日、群馬県ツキノワグマ緊急対策協議会の主催で「ツキノワグマの生態、行動と被害対策について」と題した講演会が県庁で開催されました。講師は羽澄俊裕さん((株)野生動物保護管理事務所代表取締役)。羽澄さんは国や都道府県の野生動物保護管理、農作物被害対策に関する委員を数々務める専門家です。
講演では、クマの生態、クマによる被害とその対策などについてわかりやすく説明がありました。(講演内容は青字)。
ツキノワグマの特徴
・行動範囲は通常、オス100k㎡、メス30k㎡以内であるが、エサが不足した場合などはもっと広く移動することもある。
・雑食性で、季節毎にその地域にあるもっとも都合のよい食べ物を利用する。
・冬眠前の飽食期は8月中旬から始まる。(冬眠に向けて体の生理状態が大きく変化を始めるのがこの時期)。
・飽食期には特にドングリ類を求める。
・冬眠は12月~4月。年によって変動する。しかし、この変動がどのような理由で起こるかについては、はっきりわかっていない。
・発情、交尾期は5~7月。受精卵はすぐには着床しない。母クマの栄養状態が良好であれば着床する(着床遅延)。栄養状態が悪ければ子供はできない。
・よって、秋の飽食期の食べ物の確保はクマにとって大変重要。
・出産は2月頃で赤ん坊は小型で10㎝くらいしかない。
クマが人里に出没する原因の一つとして、「誘因要素の管理不足」がある。
・残飯、死んだ家畜、収穫されない野菜や果樹などの放置がクマを人里に引きつけている。
・畑や果樹園を電気柵で囲い、農場や牧場、養魚場などの管理を適切に行う
・高齢化・過疎化による農村、農林業の荒廃がクマ出没の大きな要因となっている。
今年、有害駆除で捕獲されたクマは全国で4千頭にもなると言います。群馬県内でも325頭ものクマが有害鳥獣駆除で捕獲されています。絶滅も心配され保護が必要と言われている大型動物でこの数字はちょっと異常だと思います。
羽澄さんは駆除は被害対策にならないと強調されていました。
・毎年クマが駆除される場所は決まっており、そこでの被害もなくなっていない。
・被害発生後に駆除して終わりでは、被害は繰り返されるだけ、根本的な対策を取らなければダメ。
ツキノワグマが人間の居住圏に出没する要因と対策のポイント
・移動可能な環境要素→環境を改変して移動経路を断つ
クマが姿を隠せるようなヤブの刈り払いなど
・誘因物→誘因物を取り除く
生ゴミ、家畜の餌などの適切な管理、収穫されない農産物の撤去
電気柵の設置、適切な管理
・人慣れ→警戒心を持たせる
最近、人を恐れないクマやイノシシが増加している。
秋の飽食期前に人里に出没するクマもいるが、これは人里近くにクマが住み着いているということ。人慣れしたクマは危険。
クマによる被害を減らすためには、農村の基盤整備により、人とクマが棲み分けられ、被害に遭わない農村環境を造ることが必要。農林業、農村の振興こそが根本的なクマ対策。
「クマなどの野生動物が人里に出てくるのは人間が山の自然を破壊したから」。そんなステレオタイプの見方では今の状況を理解することは出来ません。農村の過疎・高齢化、里山システムは機能停止。このような状態で人間界とケモノの世界との境界があいまいになりつつあるのが現状のようです。
ツキノワグマを知っていますか(県庁HP)
WMOホームページ (株)野生動物保護管理事務所
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